映画「トラック野郎・爆走一番星」にて、第二の幕開けを
映画 「トラック野郎・爆走一番星」が、更なる出発点に
今回は、映画・トラック野郎シリーズ第2作としての、「爆走一番星」(1975年12月公開)を話題に挙げていくのですが、この第2作目こそが、まさに前作とは「フルモデル・チェンジ」されたと言っていいほど、私には斬新な変化ぶりに移りました。
前作の映画・トラック野郎シリーズ第一弾の「御意見無用」さえも言うに及ばず、大衆娯楽文化の新世代への第一歩、と呼ぶに相応しいものであったにも関わらず、
この映画「トラック野郎・爆走一番星」そのものが、シリーズ第2作として、ただ単に当時の他の「競合映画」達に対してのみならず、前作との差別化も決定的に実現できてたな、という感覚です。
まずはどの映画・トラック野郎シリーズにおいても、共通していることだとは思うのですが、出演者たちの役どころは勿論のこと、トラック達そのものまでもが映画の第一印象を決めるべくものであったな、と思っております。
したがって、まずは何よりも映画「トラック野郎・爆走一番星」が第2作目として、一番星号とジョナサン号の飾り、そして車種共に大幅にフルモデル・チェンジされたという決定的な事実から入っていきたいと思います。
第一に前作「御意見無用」にて使用された車種については、初代一番星号の三菱ふそうT951から2代目一番星号が三菱ふそうFU型に、一方の初代ジョナサン号が三菱ふそうT650前期型から2代目が三菱ふそうT650前期型に、それぞれまずは車種そのものから、フルモデルチェンジされました。
このまさに大体的な車種のフルモデルチェンジに伴い、さすがに飾り自体も一回り、二回りも見栄えする様になりました。
そんな彼ら二人の主人公たちの大きな変貌ぶりに応えるべく、この映画「トラック野郎・爆走一番星」においては、ライバルを中心とした、他の共演者たちとしても、より一層クセの強いキャスティングになった、とも言えます。
映画「トラック野郎・爆走一番星」にて、桃次郎を支えた重役たち
勿論、今回紹介する第2作「爆走一番星」に限らず、他のどの映画・トラック野郎シリーズにおいても、重役となるキャスト達に桃次郎は支えられてきたものです。
しかし、実はこの「爆走一番星」において、桃次郎と激突したライバルについては、私自身の独断と偏見からしても、最もアクの強い、なかなか映画・トラック野郎そのものを語るに当たっても、歴史に残るべく存在であったようです。
そのライバルですが、知る人ぞ知る田中邦衛氏演じるボルサリーノです。
愛車は大型ダンプカーを独特に飾り立て、一見マフィア風のスーツに身を包んでさらに部下を数名引き連れておりました。
この田中邦衛氏のその誰もが真似できない、アクの強さでは右に出る者がいないまでの役どころが、桃次郎のライバルとしては、何とも言えない大役を見事に果たしてくれています。
実はこのボルサリーノ、映画「トラック野郎・爆走一番星」においては、桃次郎だけでなく、と言うより、元々はジョナサンに対して深い因縁を消せない関係にあったのです。
ジョナサンの前職といえば、かつて「花巻の鬼代官」との異名を轟かせた警官で、ボルサリーノもその鬼代官の取り締まりのターゲットとされ、追い込まれたトラック野郎の一人でした。
この映画「トラック野郎・爆走一番星」における、ボルサリーノ自身の生い立ちとしては、以下の通り壮絶を極めていました。
18歳で父と死別、土地を売り払ってまで小さなトラックを購入し、それでも足りず借金を抱えていました。
しかも彼の母が病気であったため、ボルサリーノは違反しなけれは生活が成り立ちませんでした。
そんなボルサリーノを執拗に目の敵にし続けたのが「鬼代官」で、追われていたボルサリーノは、ある日逃走中に事故を起こし、トラックを壊してしまいました。
そのため生活が成り立たず、母も病院を追われ死亡した、と言ってます。
かくいう苦難を自分に背負わせた、「元鬼代官」のジョナサンをボルサリーノは執拗に追い立て、復讐を目論んでいたのです。
国道ではジョナサンに愛車で部下たちと共に襲い掛かり、「思い出すまで」つきまとうと言いがかりをつけ、果てはドライブインに押しかけてまでジョナサン自身に自分が受けた仕打ちを、部下たちと共に追求し始めたのです。
そんなライバルたちとジョナサンの間に桃次郎が入り、店内ではボルサリーノとの格闘シーンが展開されました。
この勝負は互角ながらも、ボルサリーノの立場としては、ジョナサンとの決着をワッパ勝負でつける、との意向は変わりませんでした。
こうして映画「トラック野郎・爆走一番星」における、桃次郎対ライバルとの恒例となったワッパ勝負が展開されたのですが、勿論ジョナサン自身としても勝負を仕掛けられた以上は、黙ってはいられませんでした。
何とジョナサンは、一番星対ボルサリーノの勝負に途中で割り込む、という暴挙に出たため、この勝負は中断されました。
ジョナサンもまた、この際にボルサリーノに対して自らの苦節の生い立ちを語ったことにより、ボルサリーノは潔く負けを認めて、去っていきました。
このライバルキャストであったボルサリーノですが、最終場面での一番星の爆走においては、岡山から長崎の家族が待つ自宅まで、小野松吉(故・織本順吉氏)を大晦日に間に合うように送り続ける際に、警官隊から桃次郎を守る重役を果たしたのです。
この映画「トラック野郎・爆走一番星」における桃次郎及びジョナサンのライバルとして重役を果たしたボルサリーノですが、以前は自らの境遇を嘆くのみで、その復讐の矛先を、かつて自分自身を追い込んだジョナサンにひたすら向けていました。
それが桃次郎と巡り合い、そして熾烈にぶつかり合ったからこそ、彼は今までの自分自身の生き様を改めて、ゆくゆくは桃次郎との信頼関係に目覚めたのではないでしょうか。
この映画「トラック野郎・爆走一番星」においてもまた、我々は突き刺さるような学びを得られたようなと感じております。
いかに自分自身が苦しい、不利な状況であっても、それを誰かにぶつけたところで何も有利になることはない。
というよりも、いずれはその他人に対する苛立ちや恨みといった感情を斬り捨てなければ、いつまでたっても何も変わることはない、という事です。
勿論この教えは、ビジネスにおいても、人間関係その他の日常生活においても、決定的なお手本として成り立ちます。
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