「トラック野郎・望郷一番星」の、北海道を舞台とした壮大なロケ
「トラック野郎・望郷一番星」における、ダイナミックなロケの場面
トラック野郎シリーズ第三作「望郷一番星」(1976年8月公開)では、何といきなりロケの舞台が北海道に定められ、これがきっかけでまさしくトラック野郎シリーズとしてのピークに入っていったかな、って感じです。
そしてこの「トラック野郎・望郷一番星」のロケ場所がいきなり北海道という展開になったことから、このロケ自体が、トラック野郎たちにとっての「心の故郷」として愛される型になったのです。
そう言えば、主人公の桃次郎役を演じた菅原文太氏が亡くなった際(2014年11月ころ)に、「トラック野郎・望郷一番星」の、有終の美を飾ったかの命懸け意外の何物でもない爆走シーンが、テレビのニュースの一場面に映し出されていたのをたまたま覚えております。
なんせその「トラック野郎・望郷一番星」における、ラストの爆走シーンのロケについては、設定としては、『釧路~札幌間を、40トンの生魚を積んで、5時間以内に送り届ける』という、空いた口が塞がらないほどの次元でした。
それも真夏のロケという、過酷極まりない環境の下での出演者たちが体当たりで挑んだ、歴史に残る不朽の名作以外の何物でもありません。
その40トンの荷を積んで、一番星号のスピードメーターが60キロから100キロまで加速するという場面が映し出され、もし指定時間内に運べなければ、2000万円もの損害を請求される、といった、絶体絶命の状況でした。
トラック野郎シリーズにおいては、言うまでもなくどの作品ともロケはあくまで過酷で、時には捨て身とも言えるまでの姿勢でこそ成し遂げられたものです。
従って、どのシリーズのロケが一番過酷だったか、とは甲乙つけがたいものでありますが、私なりの独断と偏見で選び抜くとしたら、今回紹介する「望郷一番星」のロケが最も過酷を極め、一種の差別化作品であった、というのが偽りなき感覚です。
それ故に、これほどまでの作品のロケに役者生命を賭けられる俳優といえば、やはり桃次郎役の菅原文太氏、ジョナサン役の愛川欽也氏、そして桃次郎のライバル役のカムチャッカを演じた梅宮辰夫氏といった面々に尽きるものです。
この「トラック野郎・望郷一番星」の爆走シーンのロケの中でも、最も命懸けの場面といえば、つり橋を渡る場面でした(あくまで架空で、特撮です)。
正しく今なお愛好家達の中では語り草となってはおりますが、まあまあ同じ当時の数ある特撮の中でも、最も精巧かつ今日のCGにも劣ることがないまでの臨場感を演出しておりました。
そしてこの吊り橋を命からがら渡り終えたその後には、桃次郎とトラック野郎仲間たちとの揺ぎ無き信頼関係を描いたロケが展開されました。
「トラック野郎・望郷一番星」での、突き刺さるべくロケの締めくくり
ここ数回に渡り、トラック野郎シリーズ関連の記事を書いてる私ですが、無意識のうちになぜかこの作品の「起・承・転・結」の「結」の場面ばかりから入っていってますが、なぜならこの作品はそれ故に高い歴史的価値を提供し続けてきた、と言うに相応しいからです。
確かに私個人的にもこのトラック野郎シリーズの中でも、爆走シーンを最も欠かせないハイライトスポットとして取り上げたい、という事もありますが、それ以上に、桃次郎が捨て身の姿勢で仲間たちとの信頼を賭けて一代の大役を成し遂げるという心意気こそが、最も学ぶべきものであります。
その一番星が航海中に「富良野市を通過した」という辺りからのロケが、この「トラック野郎・望郷一番星」においては有終の美を飾るべくクライマックスとして展開されたのです。
かつてのライバルのカムチャッカもトラック野郎仲間たちと電話でやり取りしつつ、「3時間もぶっ飛ばしてる」という一番星号のタイヤのバーストを防ぐために、必死でタイヤ交換を指示していました。
にもかかわらず、トイレに行く暇すらないと、桃次郎はトラック野郎仲間たちの指示をそっちのけで、札幌に向かって爆走し続けました。
そこでカムチャッカが苦肉の策として、道路を水で冷やす案を思いつきました。
トラック野郎仲間たちは、道路にホースやバケツリレー、そして時にはダンプカーを使っての散水と、炎天下の中、ロケはさらに過酷を極めました。
こうした仲間たちの支援のおかげで、一番星は指定時間ギリギリに札幌の市場まで荷を送り届けることに成功しました。
そしてこの「トラック野郎・望郷一番星」の、幕を閉じる場面で、ぶっ飛ばし続けてきた一番星がタイヤのバーストを起こし、走行不能になってしまう、またまた命懸けの幕引きのロケが展開されたのです。
今回紹介した「トラック野郎・望郷一番星」では、仲間同士の信頼関係を守るためには、主人公を始めとした、出演者たちが正しく一丸となって、理屈ではなく過酷なロケの環境に身を置くことにより、見る者たちに突き刺さるような演技を示していた、と言えます。
我々としてもまた、この「トラック野郎・望郷一番星」において、出演者たちが過酷なロケにおいて流しづけてきた汗を無駄にすることなく、信頼関係のために必要なものを、一つ一つ学んでいきたいものであります。
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